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救世主・国営ファンドは一体どこへいったのか?
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次々と生贄になる“越境する投資主体”たち
おそらく後世を生きる人たちは、去る2008年9月14日を「血の日曜日」として歴史に刻むことだろう。
150年もの歴史を持つ、米国を代表する“越境する投資主体”リーマン・ブラザーズが破たんしたからだ。
実に60兆円にものぼる赤字額。
普段、金融マーケットにまったく触れていない方々は、この知らせに大いに驚かれたのではないかと思う。
しかし、このコラムの熱心な読者の方にとっては「想定内」だったのではないかとも思う。
これまで私は、このコラムを通じて、現在とこれからのマーケットと、それを取り巻く国内外の情勢について、おおむね次のように御説明してきた。
米国由来のリスク資産に基づく損失額は最大1,000兆円近くにまで膨れ上がっている可能性がある。
米欧系の“越境する投資主体”たちにとっては、これを一体どこまで隠し通せるかが問題でありつつ、他方で隠している間に一体どれだけのカネを短期間で集められるかが勝負となっている。
あまりにもすさまじい損失額のため、とるべき最終手段は地政学リスクの炸裂と、それにともなうマーケットでの「マネーの潮目」の発生でしかない。
要するに、限定的だが派手な地域紛争の勃発ということであり、グルジア紛争の本質はそこにある。
もっとも、こうした炸裂を繰り返していく間にも徐々に米国の金融システムは溶解(メルトダウン)していく。
しかし、これですら空売り(ショート)をし、少しでも稼ぐための“越境する投資主体”たちによる非常手段だと考えれば納得がいくことに気づかねばならない。
その次の手段は、要するに「共食い」である。
ちょっとでも気を許した隙に、他の“越境する投資主体”たちが足許をすくってくる。
しかし、全ては全体のため、システムのため、である。
もちろん、米政府にも最初から「救済」をする意思はない。
なぜなら、期待を持たせておいて“破たん”させたほうが、「想定外」の演出をしやすくなり、空売りにとっては好都合だからだ。
「共食いという非常手段」こそが、現在とられている最大のシステム救済手段であるということを、私たち日本の個人投資家はまず認識しておくべきだろう。
「国営ファンド(SWF)たちよ、どこへ行ったのか?」
マーケットとそれを取り巻く国内外の情勢をめぐる「潮目」をウォッチする中、ここにきて非常に気になる報道にめぐり合った。
「銀行たちはうなだれて国営ファンド(SWF)を見ている」という記事である(9月15日付米フォーブス参照)。
本来、米国由来のリスク資産に基づく損失額という巨大な「穴」を埋めてくれるはずだったのが、中国、ロシア、あるいは中東といった国々が国家として運営するファンド、すなわちSWFであったということは、これまでこのコラムでも繰り返し述べてきたとおりである。
しかし現実はどうかというと、そうした絵柄とはまったく異なっている。
今回のリーマン・ブラザーズの経営破たんの例を見ればお分かりいただけるとおり、待てど暮らせど、SWFという“白馬の騎士”はやってこない。
「一体どこへいってしまったのか?」というわけである。
大変興味深いのは、この記事の中でとある専門家たちが概要を次のとおり「解説」しようと試みていることだ。
(1)SWFは確かに当初、やる気まんまんだった。
そのために準備もしてきたし、一部は2007年後半の段階で米系“越境する投資主体”たちに投資すらしてきた。
(2)しかしその結果どうなったのか?「大損」である。
これに懲りたSWF勢は、もはや米欧マーケットをはなれ、より広く日本やアジアにおけるインデックス系金融商品を物色し始めている。
「ああ言えば、こう言う」という響きが無いわけではないが、他方で気になることがないわけではない。
「米国経済が倒れると、日本経済も倒れる」と私たち日本人の多くが信じている。
しかし、歴史、しかも1990年代半ばという直近の歴史を見る限り、そうではないことが分かるのだ。
当時、日本経済を支えるテコとなったのは、ドル安転換になって輸出産業が活性化した東南アジア諸国であった。
つまり「アジア」というもう1つのテコがあり得るのであって、これが果してどこまで日本を支えてくれるのかこそが今の焦点であるというべきなのである。
したがって、米国における金融メルトダウンが即「世界の終り」であるかのように言うのは全くおかしい。
これはいわば、「ある出来事が起きると喧伝し、それを怖れる人々に特定の物品を売りつけよう」とする戦略的PRである危険性が高いのではなかろうか。
金融メルトダウンをチャンスにするには?
この点も含め、今後、激動が想定される“マーケットとそれを取り巻く国内外情勢”について私は、10月4・5日に神戸、大阪、名古屋、そして10月18・19日に東京、横浜でそれぞれ開催するIISIAスタート・セミナー(完全無料)で詳しくお話できればと考えている。
ご関心のある向きは是非ともお集まりいた だければ幸いである。
普段は全く金融マーケットを取り扱わないような一般のメディアでも、徐々に「これから起きること1929年の世界大恐慌と同じなんじゃないか?」といった危惧感を報じつつある。
確かにそのような一面もあるが、他方で当時と全く重ならないことにも気づいておくべきだろう。
当時は情報通信手段が限られており、「情報」を握り、先回りできる者はごくわずかだったからだ。
その結果、そこでの危機=リスクを“チャンス”へと変えることができたのはごくわずかだったのである。
大恐慌で株価が正に大バーゲン・セールとなった際に大量に買い込み、その後、巨万の富と権力を得たのが、戦後の米国における“エスタブリッシュメント”に他ならない。
しかし今は違う。
インターネットの普及により、ある一定のメソッドに従えば、誰しもが数多くの情報を入手し、それを分析し、具体的な投資・事業戦略へと変えれば、リスクをチャンスへと変えることが出来るようになっているからだ。
このメソッドによって体得できる能力のことを「情報リテラシー」と私は呼んでいる。
これまで“越境する投資主体”たちによって騙され、奪われてきた私たち日本の個人投資家が今こそ必要としているのは、この「情報リテラシー」に他ならないのだ。
巨大なリスクだからこそ、巨大なチャンスにもなる。
そのことに誰よりも早く気づき、行動する気概のある者だけが、次の「潮目」を乗りこなす有資格者であることを、忘れてはならない。

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