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原油市場における投機筋の動向
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1.原油市況;140ドル台が目前に
原油相場(WTI、期近物)は、6月5日の取引で一時1バレル=139.17ドルと史上最高値を記録し140ドル台に迫った。
5月22日に135.09ドルの高値をつけた後、相場はいったん軟調に推移していた。
ドル相場が堅調に推移したことが原油相場の売り材料とされ、6月3日にバーナンキ米FRB議長がドル安に懸念を表明しドル反発の動きが強まると、原油相場も下げ足を早め、4日には一時122.00ドルと、5月上旬以来となる1ヶ月ぶりの安値に下落した。
また、ブラジル沖合いに大規模油田が発見されたことや、イラクの治安情勢の改善が伝えられたこと、ガソリン需要の減少観測が示されたことや、インドネシアなどアジア各国で、石油製品に対する補助金を削減する動きが広がり、同地域での需要減少観測が出たことも売り材料となった。
さらに、29日に米商品先物取引委員会が商品取引に対する監視強化の方針を打ち出したことも相場を押し下げる要因となった。
この間、ОPECのアルバドリ事務局長が増産に否定的な見解を示したことや、ナイジェリアで大統領就任1周年にさいし、反武装勢力が石油関連施設への攻撃を警告したこと、米国でハリケーンの活動が例年と比べ活発化するとの予報が示されたことによりガソリンの先高観測が出たこと、イランの核開発疑惑をめぐり欧米諸国とイランとの対立が強まったことなどは買い材料とされたものの、相場の下落傾向に変化はなかった。
しかし、その後、欧州の利上げ観測と米雇用指標の悪化により、ドルが再び下落すると原油相場は急反発し、6日にイスラエルによるイラン攻撃を示唆した発言が出ると、過去最大の上昇を記録し、139.12ドルと140ドル目前まで急騰した。
その後も、米為替市場介入観測からドルが再び反発したことや、ガソリン小売価格が初めて4ドル/ガロン台をつけ需要減退観測が強まったこと、サウジアラビアの産油量が50万バレル増加しているとの報道などからいったん反落したものの、米原油在庫が予想を上回って大幅に減少したことや、イランの核問題について武力攻撃を排除しないとしたブッシュ大統領の発言などから再び137ドル台に反発した。
米ドライブシーズン入りによるガソリン在庫不足への警戒感や、ナイジェリアで労使交渉が決裂しスト入りの可能性が高まったことも供給懸念を強め買い材料となった。
原油相場の先物カーブをみると、半年先までは価格上昇が見込まれており、その先についてもほとんど価格が下落しない予想が示されている。
5月半ばまでは、期近物をピークに期先になるほど価格が安くなるバックワーデションであったが、その後、先行き見通しが大幅に変化している。
一方、先物市場における投機筋のポジションをみると、原油の買い越し幅は3月11日に終わる週をピーク減少傾向で推移しているが、ガソリンの買い越し幅は2月5日に終わる週を底に拡大傾向で推移している。
原油相場の上昇テンポは一段と速まっている。
しかし、原油相場は2007年の平均である72ドルから60ドル以上も上昇した水準にある。
世界の原油需要は年間300億バレル強であり、仮に原油相場が1バレルあたり60ドル上昇すると、年間2兆ドルも石油ユーザーの負担は増えることになる。
原油輸入国の経済は、原油高によって大きく下押しされることが懸念される。
石油の需要面では、価格高による需要減退や重油から天然ガス等への代替が表面化するとみられる。
これまでのところ、市場では需給ひっ迫への思惑が強いことから、地政学リスクを連想させる材料には敏感に反応するとみられるほか、夏場にかけて、ガソリン需要の増加観測も強まりやすく、原油相場の上昇はしばらく続く可能性がある。
しかし、実際には景気減速やガソリン価格上昇により、米国のガソリン需要は抑制されるとみられ、為替相場の動向にも影響されやすい地合いは続くものの、年末にかけて、いったん100ドル程度まで反落する可能性があろう。

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