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空売り(からうり)とは

空売り(からうり、英:short selling)は、投資対象である現物を所有せずに、対象物を(将来的に)売る契約を結ぶ行為。商品先物や、為替証拠金取引でも用いられる用語だが、差金決済を前提としたこれらの市場では売り買いとも「空(から)」である事が前提であるため、端的に「売り」「ショートshort」と呼ぶことが多い。対象物の価格が下落していく局面でも取り引きで利益を得られる手法のひとつ。「信用売り」「ハタ売り」も同義語である。対義語は「空買い」。

目次

  • 1 概要
  • 2 空売りの流れ
  • 3 空売りの利点と問題点
  • 4 逆日歩
  • 5 脚注
  • 6 関連項目
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概要

元々の「空売り」とは、対象物を保有していない状態で特定期日に対象物を特定価格で手渡すと約束する対象物の「信用売り」を指した。当然、この契約を遂行するために決済期限前までに対象物を探すことになる。ここでもし決済猶予期間に対象物の価格が契約価格よりも値下がりすると、対象物を安値で仕入れて契約時の高値で決済することになるので差額の利益が生まれる。逆に対象物の価格が値上がりしていると、高値で買い取って安値で手放すことになるので損となる。

現在の株式市場での「空売り」とは、証券の保有者から証券を借りて市場で売り、証券の返却期日前に証券を買い戻す行為を主に指す。この場合は株の貸借の返済期日(制度信用:半年、無期限信用の場合無期限)までに証券の価格が値下がりすると証券を安値で買い戻して高値で決済することができるので、差額による利益が生まれる。

一般の投資家は証券会社を通じて株券を借りて売ることになるが、証券会社は証券金融会社を通じて他の証券会社や機関投資家、信託銀行などから借り受けることで調達する。また機関投資家が直接大口株主と株券の貸借(株券消費貸借)契約をおこない、そのさい借りた株券を売却することもある。

英語においては証券を一定期間借りて市場で売り証券の返還日前に買い戻す行為をShortSelling、株を借りずに売りの契約を結ぶ行為をNakedShortSellingあるいはNakedShort(裸売り)とよぶ。裸売りの場合は手渡す株を確保(Locate)していない段階で売りの契約を結ぶので株の引渡し前に手渡す株を市場で探すことになるが、株が市場に売りに出されておらず見つからない場合は”FailiureToDeliver"、(契約不履行)となる。元々の「空売り」の意味はNakedShortSellingのほうが近い。NakedShortSellingはまさに空(信用)の売りであるので多くの証券市場で法的な制限が存在する。

ShortSellingの場合は取引高が借受け(Locate)できる現物の株の数に限定される。一方でNakedShortの場合は理論上は現時点で市場に出回っている現物株の数と関係なしに信用売りの契約を結ぶことができるという違いが存在する。

正当な市場の動向の予測による株取引を行い利益を得ることは現在でも問題は無いが自ら膨大な空の(証券無保有)を結び市場の価格を暴落させて無理やり自らに有利な相場を作って利益を稼ぐ行為は証券価格の適正価格からの遊離、さらには証券市場や実体経済の混乱を招くため不法な「価格操作」として法的に規制されている。過去には仕手戦においてNakedShortの「空売り」が横行し、空売りは投機行為の代名詞となり、空売りという言葉自体にネガティブなイメージを持たれるようになった。これは 現在では空売りに対して様々な法的規制が存在し、空売りといえばほとんどの場合は借り受け売りのことを指すようになった。一方で空売りは現物株が市場に出回っていないときにも売買契約が可能(市場の流動性)になるという効用が存在するため、証券取引が活性化されるという利点が存在する。

また、空売りによる取引額の増大により証券市場においてより株の適正価格が確保される、という意見と、空売りにより投機行為の増大により株価が適正価格から遊離する、という意見が存在する。特に、前者の空売りは現物株が存在しない段階で結ぶ架空の売り行為でありこのような経済活動は制限されるべきである、という意見と、空売りに対する規制は自由契約の原則を犯す行為であり好ましくない、という意見が存在する。NakedShortは厳密には決済期日までに反対売買により差金決済をおこなう先物取引に相当するため、現在の現物株取引市場においては規制(T+3ルール)が存在する。

空売りの流れ

空売りの流れを簡略化すると以下のようになる。

  • 投資家は証券会社から株を借り、それを市場で100円で売る。投資家は株を売った代金100円を得る。
  • 後日、当該株価が下がり、市場で同じ数量の株を代金90円で買い株式を手に入れる。
  • この90円で買った株式を証券会社に返却する。差額の10円が投資家の手元に残り、これが投資家の利益になる。
  • 実際には、投資家は売買に関する手数料のほか、株を借りたことによる貸株料を証券会社に支払う。証券会社ははじめの売却代金である100円を預かるので、その金利(日歩)を投資家に支払う。

    空売りでは、投資家が証券会社から株を借りるので、投資家と証券会社との間に信用関係があることが条件になる。空売りのような行為は信用取引と呼ぶ。このため空売りを行うには証券会社に信用取引口座を開設する必要がある。

    もし、空売りした株の値段が予想に反して上昇した場合でも、投資家は証券会社に株を返却しなくてはならないので、空売りした時よりも高い値段で株を買い戻さなくてはならない。この場合には投資家は損をする。空売りによる利益は、倒産等による株式の無価値化の場合に最大となり、その金額は空売りを行った金額以下(上記例では100円、実際には株価は0円にはならないのでそれ以下)に限定される。一方で株価が予想に反して上昇した場合には、損害が天井知らずという危険性を持っている。

    決算期末の権利確定日までに現物を売りたいが、同時に株主としての権利を得たい場合に、空売りを行うことがあり、この場合は「つなぎ売り」と呼ばれる。

    空売りの利点と問題点

    理論的には空売りとは自らが経済的持分として現有しない株式を公開市場で売却する意志を提示し約定をとりつける詐称であり、決済期日(T+3ルール)までに調達しなければ”FailiureToDeliver"という異常事態におちいる。また意図的に現金決済をもくろみ”FailiureToDeliver"やむなしの約定行為は現物取引市場においては禁止されている[1]。

    一般投資家が制度信用取引を利用することで売りポジションをもつことに対して、空売りの制度上の問題点が指摘されることはない。一方で「空売り」の基礎となる株券を担保とした金銭消費貸借契約は、本来は提出された株券を担保として金銭を貸し出す契約であって、借主の債務不履行がない限り担保権の執行が行えない前提であるところ、株式消費貸借契約の場合では金銭消費貸借の借主側の債務不履行を前提とせず担保株式の処分を可能とする契約であるため、当該企業の主要株主(オーナー株主や経営陣など)が株式消費貸借契約を申し込んできているという特筆事由を材料に、事実上のインサイダー取引が可能になる点が問題となり空売り規制の対象とされることがある。

    また空議決権行使(経済的持分なしに議決権を行使すること)あるいは持分の隠蔽(経済的持分を持ちながら議決権を持たない状態であること)の問題がある。これら経済的持分と議決権の不一致の問題は株券貸借や株式デリバティブ(金融派生商品)を用いて比較的容易に作りだせる。前者は株主総会の基準日を越えて借株を持ち越せばよく、後者はトータルリターンスワップ契約(約定利息を支払う代わりに配当金・株価上昇した場合の上昇差益を得る権利を取得する契約)を行えばよい。いずれも正当な契約であるが、自らに都合のよい採択がなされるように空議決権を行使したり、大量保有報告書に登記されることを隠蔽しながら実質的な買い進めをおこない突然大株主として浮上し会社に圧力をかける手段として利用される可能性がある[2]。

    逆日歩

    通常は金利(日歩)が投資家に対し支払われるが、売り長(信用売り残高が信用買い残高を上回ること)の場合、証券金融は機関投資家などから不足した分の株を調達する。調達は入札によって行われ、その日に調達された株のうちで最も高い料率を品貸料として証券会社に請求。同銘柄を空売りしていた投資家がこの額を負担する。これを逆日歩と言い、仕手戦などの投機的な株価形成の際には売り方の買戻しやその期待感から、さらなる株価上昇の足がかりになる場合がある。しかし実際は売り方・買い方の勢力次第であり、連日逆日歩の何倍以上も売り込まれてゆくようなケースも多い。また逆日歩目当てに信用買いに回った翌日に現提(現渡し・品渡し)などにより逆日歩が消え、思惑が外されるケースなどもある。大きな率の逆日歩は、株価が乱高下する要因のひとつとなるのでリスクも大きい。このため、「逆日歩に買いなし、逆日歩に売りなし」という格言も生まれている。

    脚注

  • ^ 日本では金融商品取引法第161条の2に規定する取引及びその保証金に関する内閣府令第9条、第10条
  • ^ 日本経済新聞(夕刊)2008年9月19日「十字路」
  • 関連項目

    • 信用取引
    • 著名投資家一覧
    • 証券取引法施行令
    • 有価証券の空売りに関する内閣府令
    • 日本証券金融
    • つなぎ売り
    変更履歴
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