欧州為替相場メカニズム(ERM)とは
ユーロ圏
ERM II対象国
上記以外のEU加盟国
ユーロを導入している非EU加盟国・地域
欧州為替相場メカニズム(おうしゅうかわせそうばメカニズム 英・European Exchange Rate Mechanism 略称・ERM)は、ヨーロッパにおける為替相場の変動を抑制し、通貨の安定性を確保することを目的とした制度。欧州委員会は1979年3月、欧州通貨制度 (EMS) の一環としてERMを取り入れ、欧州連合 (EU) における経済通貨同盟や1999年1月1日の単一通貨ユーロの導入に備えた。
目次
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目的と実施
ERMは為替相場変動幅の固定という概念に基づいているが、定められた変動幅において為替は値動きする。ユーロ導入以前は、為替相場は欧州通貨単位 (ECU) によるものであり、ECUにおける為替価値は対象通貨の加重平均として決定されていた。
2通貨間のグリッドはECUで表されるセントラル・レートに基づいて算定され(パリティ・グリッド)、2通貨間の変動は±2.25%の範囲内に抑えられており(ただし通貨の一方がイタリア・リラである場合は±6%の範囲まで認められていた)、また市場介入やローン・アレンジメントによって対象通貨の変動幅以上の値動きが回避されていた。
アイルランド・ポンドのポンド・スターリングに対するパリティ喪失
1979年、アイルランドがERMに参加したことにより、アイルランド・ポンドはイギリス・ポンドとの等価性を失った。ERMの開始直後に、ERM対象通貨でないポンド・スターリングは全ERM通貨に対して上昇し、アイルランド・ポンドとパリティを続けていたならば、アイルランド・ポンドは変動制限幅を超えた値動きをしていたと考えられる。
ポンド・スターリングのERM撤退
1990年イギリスはERMに参加したが、1992年には退場を余儀なくされた。これはポンド・スターリングがジョージ・ソロスなどの通貨を対象とした投資家の巨大な圧力を受けたためで、このため1992年9月16日に発生したポンド危機は "Black Wednesday" (暗黒の水曜日)と呼ばれるようになる。イギリスはポンド危機の対処のために数度の政策転換を繰り返し、結果1992年以降の好景気をもたらすことになった。このことから一部からはポンド危機を "White Wednesday" と呼ばれることがある。またイギリスが1990年代初頭に不況に見舞われたことから、ERMを恒久的不況メカニズム (Eternal Recession Mechanism) と揶揄する者もいた。イギリスは為替相場の変動幅を押さえるために、金準備を含め60億ポンド以上を費やした。
変動幅の拡大
1993年、フランス・フランなどの通貨に対する投機に対応するため、変動制限幅を15%まで拡大した。
ユーロ移行とERM II
1998年12月31日、ユーロ圏諸国のECUとの為替取引が終了し、ECUと等価でユーロとの取引に移行した。
1999年、ERMはERM IIに移行した。ギリシャ・ドラクマとデンマーク・クローネがERM IIの対象となったが、その後ギリシャは2001年にユーロを導入し、デンマーク・クローネのみが唯一の対象通貨となった。ERM II対象通貨はユーロを基準とするセントラル・レートに対して±15%の変動幅とされ、クローネの場合では、デンマーク国立銀行は1ユーロ=7.46038をセントラル・レートとして、またより幅の小さい±2.25%を変動制限幅とした。
ERM II対象通貨の状況
2004年5月1日、EUに新規加盟した国の10の中央銀行がERM II中央銀行協定を締結し、各国通貨は異なる相場でERM IIの対象となることが相互に承認された[1]。
エストニア・クローン[2]、リトアニア・リタス[3]、スロベニア・トラル[4]は2004年6月28日に、キプロス・ポンド[5]、ラトビア・ラッツ[6]、マルタ・リラ[7]は2005年5月2日に、スロバキア・コルナ[8]は2005年11月28日にそれぞれERM IIの対象となった[9]。2004年5月1日にEUに加盟した規模の大きい3つの国の通貨(ポーランド・ズウォティ、チェコ・コルナ、ハンガリー・フォリント)も将来的にはERM IIの対象となることが見込まれている。
ブルガリアは当初2007年にERM IIの対象となることを見込み、欧州委員会の決定とは関係なくERM IIの規則に従っていたがいまだ実現していない。一方でルーマニアは2010年から2012年までのERM II入りを目指している[10]。
ユーロを導入していないEU加盟国は、ユーロ圏入りの最低2年前までにERM IIに参加することが求められている。スロベニアは2007年にユーロを導入しているため、スロベニア・トラルはERM IIの対象から外れた。2008年1月1日にはマルタ・リラとキプロス・ポンドもユーロに移行し、ERM IIの対象から外れた。
スウェーデンは通貨切り替えに必要な収斂基準を満たすためにERM II参加が期待されているが、1990年代初頭に深刻な通貨危機を経験したスウェーデンはERM II参加を渋っており、通貨をスウェーデン・クローナとしたままとしている。ユーロに切り替えないというスウェーデンの判断は欧州中央銀行も許容しているが、最近の加盟国からは不満の声があがっている。
為替変動幅
理論上、ほぼすべての通貨は基準値の±15%までなら相場が変動できることになっている。ところが実際はバルト諸国の通貨はセントラル・レートに対して固定されており、スロバキア・コルナ以外はセントラル・レートに対して大抵の場合は±1%以下に変動幅が抑えられている。スロバキア・コルナの変動幅はほかのバルト諸国の通貨とは対照的に大きなものとなっている。
| 通貨 | ISO 4217 コード | セントラル・レート (対1ユーロ) | 変動幅 |
|---|---|---|---|
| デンマーク・クローネ | DKK | 7.46038 | ±2.25% |
| エストニア・クローン | EEK | 15.6466 | ±15% |
| リトアニア・リタス | LTL | 3.45280 | ±15% |
| ラトビア・ラッツ | LVL | 0.702804 | ±15% |
| スロバキア・コルナ | SKK | 35.4424 | ±15% |
| *2007年3月17日以前のスロバキア・コルナのセントラル・レートは1EUR=38.4550SKKだった[11][12][13]。 | |||
脚注
関連項目
- 欧州連合の経済
- ユーロ
- ユーロ圏
- 欧州中央銀行
- 欧州中央銀行制度
外部リンク
- ユーロと経済通貨同盟 駐日欧州委員会代表部
- EUにおける通貨統合 外務省
- Pound drops out of ERM ガーディアン (英語)
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