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ジャストインタイム生産システム

ジャストインタイム生産システム(Just In Time:JIT)は、経済効率を高めるための技術体系(生産技術)である。トヨタ自動車の生産方式(トヨタ生産方式)の代表的な要素としてよく知られている。カンバン方式とも言われる。“必要な物を、必要な時に、必要な量だけ生産する”こと。アメリカの自動車業界でもJIT(ジット)といえばこのことである。

目次

  • 1 概要
  • 2 電子カンバン
  • 3 便係数
  • 4 ジャストインタイム生産方式の問題点
    • 4.1 当のシステム採用企業の場合
    • 4.2 取引先企業の場合
    • 4.3 顧客サービスの低下
    • 4.4 社会への悪影響
  • 5 関連項目
  • 6 外部リンク
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概要

ジャストインタイム生産方式の最大の狙いは、工程間の仕掛在庫を最少に抑えることである。工程間在庫を最少にする究極の形とは、完全受注生産である。しかし、生産のプロセスを見た場合、オーダーから出荷までの間には数多くの工程が存在し、それが結果としてリードタイムの長時間化をもたらす。ニッチな製品の場合は顧客側も長リードタイムを受け入れる場合が多いが、一般的な大量生産品の場合は長リードタイム化はそのまま販売の機会損失に繋がる。そのため、ある程度の見込み生産が発生するが、見込み生産の量が多いことは、資金の投資から回収までの期間が長くなり、キャッシュ・フローを見た場合も損失が大きい。また、販売不振による商品の切り替えが発生した場合、多量の仕掛在庫損失が発生することもある。

工程間在庫の最少化を狙って、生産指示票としてカンバンを利用する。このカンバンは、後工程に対しては納品書として加工品と共に引き渡される。後工程で加工品が使用されたらカンバンを前工程に戻す。前工程に戻す際は、発注票として渡され、このかんばんの受領をもって前工程では製品の加工を行う。

自工程で使った分だけ前工程に作らせる連鎖を組むことで、工程間仕掛の最少化を実現する。

カンバン方式の連鎖の問題点は、販売側から工場へ入るオーダーのカンバンをどこに投入するかである。カンバンの戻す場所を「店」(MISE)といい、どこの工程にカンバンを戻すかを決めることを「店を構える」という表現を使う。製造の上流側に店を構える場合、工程間の仕掛在庫は最少になるが顧客への引渡しが遅くなる。完成品出庫側に店を構える場合、製造工程数が多い製品になればなるほど製造の源流にカンバンが届くまでの時間を要し、顧客への納期を守るために源流側で見込み生産が発生することがある。店は上流工程から順にアルファベットを用いてつけられA店,B店....と呼ぶ。

電子カンバン

通常用いられるカンバンは、プラスチック製であったり紙をラミネート(透明フィルムに封入処理)したものが多い。このようなカンバンは、実際に使われているカンバン数を素早く正確に把握することが困難であったり、紛失や長期間使用による損傷などの問題がある。また、製造工程が多工程にわたる場合や、遠隔地に取引企業が有る場合など、現物のカンバンがやり取りされることによる、上流工程へのカンバン伝達の時間的ロスが発生し、最上流部でカンバンに連動しない見込み生産が行われることがある。

カンバンが電子化されることの利点は、

  • カンバン総量の把握が容易となり、生産ボリューム変動に応じたカンバン数の柔軟化が可能
  • 上流工程へのカンバン伝達のジャストインタイム化

が可能となる。

欠点として

  • トヨタ生産方式の一つの柱である「見える化」が滞る可能性がある。

カンバンは「現場作業者」が手扱いで行う必要がある。カンバンは工場内では「お金」として扱われる。電子カンバンはいわば手形取引のようなものなってしまい、現場での商品のやり取りが帳面上の形骸化になる可能性がある。

これを避けるために実際にカンバン自身がなくなることは無く、カンバンにバーコードをつけてそれを読み込ませることで電子化を行ったり、ICチップを埋め込まれて、工場内のどこにあるのかわかるようになっているものもある。

便係数

カンバンの振り出しから納品までのタイムラグを「便係数」と言う。例えば1日に1回の配達で発注してから2日で帰ってくる場合「1-1-2」という言い方をし、「一日一便2回遅れ」と言い方をする。ちなみに1日に14便で前の便で発注したものが次の便で帰ってくる場合は「1-14-1」となる。

この便係数から、その物品が入手できるリードタイムは「便係数の第1項と第3項を掛けたものから、第2項で割る」ことで求められる。先ほどの「1-14-1」の場合は、1×1÷14となり、0.0714となる。稼動時間が1日24時間の場合1.71時間となる。つまり、この物品は1.71時間のリードタイム以下で生産しなければならないこととなる。

ジャストインタイム生産方式の問題点

反面この方式は大きな問題点を少なからず抱え込んでいるとの指摘もある。

当のシステム採用企業の場合

  • 工程能力を常時100%可動するものとして生産計画を決める事が多いため、不測の事態に対しては脆弱である。
    • 道路渋滞、荒天、事故、災害等によって、部品の納入が遅れもしくは不可能になった時、生産に必要な部品類の在庫を切り詰めているが故にすぐに生産不能に陥る。(このシステムを採用していない工場では、通常生産の継続に必要な量の部品をある程度安全在庫として確保している)
    • 納入遅れによる生産影響のみならず、工場内の工程間においても、一部機能の停止が瞬く間に工場全体にまで波及する。実際、2007年に新潟中越沖地震が発生した際国内の主要自動車メーカーから下請けを受けている企業が地震により操業停止に追い込まれた結果、多くのメーカーが生産調整の実施や自動車の一時生産中止等を余儀なくされた。
    • このように、不測の事態が起こった際の被害が大きいため、稼働維持に関しての関係者への重圧が大きい。

取引先企業の場合

(以下、同システム採用企業の別事業所も含む関連企業または下請け企業を指す)

  • 発注者側の在庫コスト削減方針により、製品をまとめて生産して納入する事が出来ないため、自社での在庫リスクが高くなる。その為、取引先企業の社内においても「売れるときに売れるだけの生産」を目指した「一個流し生産」「小ロット生産」に取り組む必要があり、このような取り組みが取引先企業に在庫の低減やつくりすぎのムダの排除をもたらし、大きな利益を生むとも言われるが、やはりその負担は取引先が負う事が多い。
  • 発注者の設定した時刻までに製品を納入できない場合、多額のペナルティを課されることが多い。
  • その対策で混流生産方式をとるにしても、それに伴う負担やリスクは小さくはない。
  • ジャストインタイムというものの、発注側がその月に発注を見込む数量を『企画台数』として事前に通知し、受注側はこの数値を基に資材手配や生産の計画を立てている。事前の『企画台数』と実際の発注数が大幅に異なっていた場合、余剰あるいは不足する資材や生産力に対するリスクは、ジャストインタイムの建前どおり受注側に負担させられる。また、モデル末期においては、大量の企画台数を通知しながら販売不振により実際の発注数が著しく少ないことがあり、受注側は生産打ち切りにより多数の在庫を抱え込むことがある。

顧客サービスの低下

顧客からの注文を受けてから資材手配と製作を行うため、即納あるいは短納期での要求に応えられない。また、納入した製品が不良品などの理由で顧客から返品された場合、再度、一から資材手配と製作から行わねばならず、顧客を長期間待たせることになる。このため、一部には返品を嫌がり修理対応に持ち込もうとする傾向も見られる。

一般に販売政策上、モデルチェンジ時期は顧客に開示されないことが多く、販売継続中の現行製品でも工場では既に製造が打ち切られていることがある。この場合、顧客が新規に注文を出しても、工場内の仕掛かり在庫以外の受注は受けられないことになる。

社会への悪影響

  • 物流への負担が大きい
    • 運送会社や取引先企業は決められた時刻までに納品できない場合にペナルティを課されることがあるため、トラックドライバーの労働環境悪化となり、深夜便での居眠り運転等による事故発生要因となる。
    • 取引先企業が、元請側から発注された必要な分だけ製品を運ぶため、運搬ロットが小さくなることにより製品輸送車両の交通量が増え、道路渋滞の多発、大気汚染、二酸化炭素他温室効果ガス排出量の増加や交通事故件数の増大等の問題を抱え込む。
    • 交通量が増えるだけでなく、工場周辺では納品待ちの大型トラックの路上駐車が常態化する。それによって道路渋滞はもちろんのこと、路上駐車しているトラックの陰などが交通弱者の交通事故の発生原因となる。また輸送のタイムラグや納品の頻度まで厳しく考慮して、納品業者に殆ど在庫が残らないような生産管理を行う場合は、在庫の大半が公道を走るトラックの荷台の上に乗っているということであり、これは公道を倉庫として使っているに等しい。つまり、本来生産企業が負担すべき倉庫代をトラックによる環境汚染と共に、社会に転嫁していることになる。
    • 上記対策の費用負担が増大し、これが地元住民に対する増税などにも繋がる。
  • 下請けへの納期要求が厳しくなる
    • 在庫を最小限にする運営では、発注先の納期遅れは発注元の材料切れに直結し、最悪発注元の工場稼働停止へとつながる。そのため納期要請は厳しいものとなり、安定した稼働にリスクを抱える末端の下請けほど、納期を守るために時に過酷な稼働を強いられる。

以上の点から、このシステムを採用している企業が本来負担すべき在庫コストを、立場の弱い下請けなどに押しつけているとする批判的な声もある。

システム採用企業の中には、地球環境保護を謳った商品開発やチーム・マイナス6%への参加、環境保護の啓発番組やコマーシャル放映などの取り組みによって環境優良企業であることをアピールしている企業も少なからず存在するが、JITシステムが抱えるこれらの問題と『矛盾したアピール』とされる。

関連項目

  • 混流生産
  • 外段取り
  • タクトタイム
  • ミルクラン
  • 生産技術
  • 大野耐一
  • 製造に関する記事一覧
  • 統計的プロセス制御

外部リンク

  • トヨタ自動車株式会社 グローバルサイト
    • 企業情報>ジャスト・イン・タイムについて - トヨタ自動車によるジャスト・イン・タイムの紹介
変更履歴
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