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金融・投資用語集 > クラウディングアウト
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クラウディングアウト

クラウディングアウト(crowding-out)とは、「押し出す」という意味で、経済学の上では、主に財政支出の増大が民間投資を圧迫する現象を指す。

一般には、クラウディングアウト効果として使われる。典型は失業対策などのため国債を発行して公共事業や減税、福祉政策の拡充などを行う場合、大量の新発国債が市中金利を高騰させ、結果として民間の経済活動(投資のための資金調達や住宅購入などの消費行動)に抑制的な影響を与えてしまう場合である。

目次

  • 1 概要
  • 2 モデル
    • 2.1 解釈
  • 3 実際のクラウディングアウト
  • 4 参考
  • 5 関連項目
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概要

クラウディングアウトのアイデアは古くから存在し、アダム・スミスは政府による経済活動はすべて不生産的労働であり、政府が公衆から資金を借入れて消費することはその国の資本の破壊であり、さもなければ生産的労働の維持に向けられたであろう生産物を不生産的労働に向けるものである、とした[1]。一般に完全雇用を前提とした古典派経済学においては、政府支出の増大は、それが租税で調達されようと、国債で調達されようと、民間支出はクラウド・アウトされる。

世界恐慌の発生した1929年頃、米国およびイギリスでさかんに論議され、米国ではフーバー政権が赤字財政と国債発行に反対し、均衡予算主義のためにクラウディングアウトの議論を援用した。またイギリスでは保守党政権下の大蔵省が同様の理論でJ.M.ケインズの立案になる自由党の提案と対立した[2]。

クラウディングアウトの問題は、行政府による経済・財政政策において基本的な論題で、もし古典派の言うように、常に完全なクラウディングアウトが発生するなら行政による経済政策にはまったく意味が無い(小さな政府)。ケインズのこの問題についての基本的見解は、失業と遊休資本が存在しているかぎりは、財政支出の増大は、その乗数倍の有効需要を創出し、民間需要を圧迫するようなクラウディングアウトは発生しない、というものである[3][4]。

ケインズ以降、経済・財政政策の無効性を完全に肯定する主張は無くなったが、経済の活動水準に影響を与えるのが金融政策であるか、財政政策であるかによって論争が起こった。マネタリストは前者を肯定し、ネオケインジャンはどちらかといえば後者を肯定する(金融政策も重視する)。

モデル

金融政策を伴わずに 財政支出が増大すると、利子率が上昇するため、民間投資が縮小する。

これにより、財政支出による国民所得増大効果の一部が、民間投資縮小による国民所得削減効果によって相殺されることになる。

以下のようなモデルを想定する。

国民所得:Y=C+I+G 総消費:C=0.9Y 総投資:I=100-4r 財政支出:G=100

総貨幣需要:L=Y-10r 総貨幣供給:M/P=1500

利子率:r

このとき

財市場均衡(IS):Y=2000-40r 貨幣市場均衡(LM):Y=1500+10r

Y=1600 r=10 I=60

となる。ここで、財政支出を拡張し、G=120とする。

Y=1640 r=14 I=44

となり、利子率が上昇し、民間投資が抑制される。これがクラウディングアウト効果である。その効果の結果として国民所得の増大効果も一部相殺されててしまう。

もし、財政拡張と同時に金融緩和を行い、利子率:r=10のままに抑えれば、国民所得:Y=1800となる。

また、逆に財政支出を減少させても、利子率が低下することで民間投資が伸びるため、国民所得減少はある程度、相殺される。

ただし、LM曲線が垂直の場合には(マネタリズム)、クラウディングアウト効果は完全となり、財政政策は国民所得を拡大させず無効となる。またLM曲線が水平の場合には(流動性の罠)、クラウディング効果はゼロとなり、財政政策は完全に有効となる。

解釈

クラウディングアウト現象は、経済のバランスにより資源配分が転換される様子を表している。

この場合、政府が金融市場から借り入れをして投資をすることで金融市場が締まり、金利上昇による民間投資減少が起きる。

つまり、金融市場を通して、経済上の資源が政府投資により多く配分される代わりに民間投資への配分が減少することになるのである。先述のように同時に金融政策(緩和)を発動すれば民間投資を制約することなく政府投資を伸ばすことが出来る。ただしこれは経済上の資源に余裕がある状態(資本に遊休や余剰があり市中金利が低迷していたり、設備稼働率が低く失業が存在する状態)にしか有効ではない。もし経済上の資源に余裕がない状態でこのような政策を発動すると、名目経済成長率のみが高まり、インフレーションが発生する。1960年代のアメリカ経済は名目成長の内訳が実質成長から物価上昇へ変化していく好例となっている。

実際のクラウディングアウト

フェデラル・ファンド金利の推移
フェデラル・ファンド金利の推移
U.S.消費者物価指数
U.S.消費者物価指数
U.S.失業率
U.S.失業率

経済理論的なクラウディングアウトの典型としては、完全雇用生産水準の状況下において行政府が追加的な財政支出をおこなうさいに発生するとされるが、現実に問題とされるケースとしては失業対策や社会保障の義務的支出を原因として財政赤字が累積状態にある状況下で、追加的な国債発行が債券市場に意図しない高金利をもたらす場合に散見される。

実際にクラウディングアウトが問題となった例として、1970年代から1980年代初頭のアメリカが上げられる。[2]

この当時のアメリカ経済は、日欧経済の復興による国際競争力の低下による不況と失業が問題となっていた。また60年代からの負の遺産として3,809億ドル(対GDP比37.6% 70年度)〜9,090億ドル(対GDP比33.3% 80年度)の累積債務があり、景気刺激策として低金利誘導を行おうとすれば市中金利の上昇に対するFOMCの買いオペレーション介入が流動性過剰(インフレ)をもたらし、インフレ抑制策として金融引き締めをおこなおうとすれば金利が急騰してしまうという悪循環に陥っていた。

1975年にフォード政権は840億ドルの国債を発行して金利の急騰をもたらした。これは民間総投資額の約半分に達するもので、連邦予算の赤字を調達し、あるいは借り換えるためのこの巨額の国債発行は、金融市場で民間資金需要と競合してクラウド・アウトをもたらし、結果として財政支出増加による所得創出効果を民間支出の減少が相殺してしまうのではないか、との議論を呼んだ。

レーガン政権では莫大な減税と歳出拡大を打ち出したため、金利水準は歴史的な水準に達し、民間投資は壊滅的な打撃をこうむった。とくに雇用面では失業者は1000万人を記録するなど戦後最も厳しい経済状況となった。その一方で海外からは大量の投機資金が流入し為替レートをドル高に導いた。ドル高は、輸出減退と輸入増大をもたらし、インフレ率の低下、海外資本による投資の拡大へつながるなど、想定とはかなり異なる展開を示した(為替市場におけるクラウド・イン効果)。

1982年中にはインフレ率の低下から高金利政策は解除段階に入った。1983年には景気回復が始まったが、それは減税と歳出拡大という財政政策を受けた消費の増大(乗数効果)が主因であった。インフレーション沈静化後は、すぐさま金融緩和が行われ、「アメリカは復活した」といわれるほど急激な景気拡張が1983年から起きた。しかし、それによる不均衡はインフレーションではなく経常赤字を生み出し、プラザ合意へとつながることになる。

日本では、1990年代に財政赤字がクラウディングアウトを起こして民間投資を減少させたという見方もあるが、日本経済は構造的に貯蓄超過の状況にあり、この間も下がり続ける金利のもとで国債は消化され続けた。むしろ90年以降の財政抑制政策は「政官民癒着」にみられるモチベーションのクラウディングアウトに関わる問題や、不況による税収不足の一方で増大する社会保障費により償還資金の手当てのための借換国債の問題などが焦点となった。

90年代には実質金利上昇をもたらすデフレがおきたことから、財政出動の不足が民間投資へ悪影響をもたらしているとの批判がなされた。この時期は金融機関の不良債権処理やBIS規制に対処するための強引な貸し渋り・貸し剥がし(信用収縮)が問題となっており、財政出動による有効需要拡大とマネーサプライ拡大(ヘリコプターマネー)を求める議会の要求が高まっていたものの、橋本政権の緊縮財政方針や小渕政権の大規模財政出動、2000年の日銀による金融緩和打ち切りなど経済政策が右往左往したこと、また森・小泉内閣がデフレであったにも関わらず供給側の効率性を向上させる「構造改革」を強く打ち出したことで信用収縮は極まったとの批判がある。

参考

  • ^ Adam Smith,The Wealth of Nations(New york:Random House,Inc.,1937)P.878
  • ^ Crouding-Out問題について 三木谷良一[1]
  • ^ ただし、政府による資金調達や財調達にともない、貨幣当局が貨幣供給増大政策を採用しなければ、利子率の上昇をもたらし投資を抑制する可能性があるとする。J.M.Keynes,The General Theory of Employment,Interest and Money,p.119.1936
  • ^ また、恒常的な財政支出が、民間の期待や予測を通じて物価、資本の限界効率(期待収益率)、流動性選好に影響をあたえ、民間投資需要と競合する可能性を指摘する。J.M.Keynes,The General Theory of Employment,Interest and Money,p.120.1936
  • 関連項目

    民業圧迫 塩鉄論 モチベーションのクラウディングアウト

    変更履歴
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